「事務所を<ラボ>と名付けたのは、私たちの手法が実験に近いことに由来があります。須川ラボには、様々な課題を抱えながらも、新しい居場所を求めている人がやってきます。」
「中でも印象深いケースは、動物好きでたくさんのペットと暮らすご夫婦の建て替えですね。家の老朽化とともに、子供が生まれた娘さん家族と住める二世帯住宅を作りたいという希望だったんです。犬に猫、カメ、鷹、イグアナ、鯉と、さまざまなペットがいましたし、植物を育てるのも大好き。よく話を聞いてみると、人間と動物の導線が混ざり合い、床が土で汚れてしまうなど空間が生活スタイルに合わない部分がありました。」祖父母と娘さん家族、総勢6人。それに大勢の動物たちと植物。ともすれば渋滞を起こしかねないが、大胆な発想が、家族の居場所をつくった。
「意識したのは、人と動植物それぞれを尊重して「場」を作ること。 ふた家族の二つの家が路地を介して向かい合って建っているようデザインし、それを覆うようにひとつの天井を架けました。そのおかげで、干渉せずともつながりを感じられるんです。動物のための土間をつくったので、犬の散歩のあとは路地に面した浴室で足を洗えますし、鳥を外に出して日光浴させることもできます。鉢植えは夏は外に出し、冬は内に入れて防寒できるように。床材には、頻繁に動植物を出し入れするので、傷がついても味が出るように店舗などで使う古材風オークを採用しました」
太陽の光がよく似合う、健やかな家。通路が入り組み、アジアの街のような活気なので、アジアンマーケットハウスと名付けた。
様々な空の色を配した外壁。人や動植物の活動をうつしだす背景となる。(3点撮影: 新建築社写真部)
「最初はヒアリングから始めます。ここで重要なのは予算ではないんです。人となりですね。どんなお仕事をしていて、どんなファッションで過ごしているのか。休日はアウトドア派なのか、それとも家でゴロゴロするのが好きなのか。料理はする? 家事は? どんなことを考えて毎日暮らしているのか、いろいろと話をしてみます。イメージがすでにこのタイミングで湧き上がってくることも多いんです」
「そして現地へ出向いてみます。新築の場合に意識しているのは、該当する土地だけでなく、引きの目線で見ること。ブロック全体を歩き回りますし、長時間立って見て、どんな車が通るのか、近所にはどんな人が住んでいるのか確認する。近くに飲食店があるなら入ってみますね。敷地がもつカルチャーを身をもって味わう。一方で、大人数を仕切りながら生活しなければならない三世代住宅を設計した際は、科学的に風と熱を解析しました。快適に暮らすにはどこに窓を置いたら風通しがいいのか、窮屈にならないような工夫が必要だったんです」
設計模型に加え、イラストを用意することも。提案時に理解してもらいやすい。以前は事務所と自宅が別だったが、出産を機に自宅内へと移した。
「建築家を目指す道のりは人によって多少違いがあります。私たちの場合は、建築学科のある四年制大学+大学院を卒業し、一級建築士の受験資格を取得しました。一級建築士試験は、学科と製図、どちらの力も問われていて、6時間ほどかけて図面を手でひくという課題もあります。例えば「保育園、平米数や生徒数はこれくらい」といった課題に沿って図面をひく。制限時間が長いので、早く終わらせて休憩しようが、ギリギリまで粘ろうが自由。この試験では、個性ではなく法律に則った正確さや基礎力が大事なんです。余計なことを考えず、シンプルに向き合う方が合格に近いと思います」
その後設計を続けるには道は大まかに二つ。組織設計事務所(規模の大きな設計事務所)や大手建設会社の設計部に入社するか、個人事務所・アトリエに入るか。独立志向のある人、アーティスト気質な人は、アトリエに入ることが多いとか。師匠もそのつもりで、力がついたら親から巣立つという自覚を持って育てるのだという。お二人とも個人事務所で経験を積んだのち、哲也さんが35歳、真紀子さんが29歳の時、ビジネスパートナーとして須川ラボ建築設計事務所を立ち上げ、その後に結婚。現在に至る。
「事務所の立ち上げたきっかけは、年齢的にも経験値としても「そろそろ」と感じたこと。最近は、即座に立ち上げたり、急速に成長するというスタートアップが話題ですよね。建築家はそれとは真逆。実地での経験を積むことや資格を取得することが大前提なので、本当に腕一本。とにかく場数を踏み、自分に力がついたと感じた時に、初めてスタートを切ることができるんです。その点でいうと医師や会計士、弁護士なんかと近い職業だと思っています」
最初の仕事は、髪を切ってもらっていた美容師さんが独立する店舗だったそう。「建築家サイトなどにも登録していますし、お客様が自由に参加できる相談会などにも参加しています。知人など、大なり小なり接点のある人と仕事をすることも多いですが、大切なのは、いかにお互いのことをよく知り合い、信頼関係を築いていくか、だと思います。新築もリノベーションも、住まいを作るというのは大きな決断です」
打ち合わせに欠かせない、素材サンプル。打ち合わせの他は、自宅で図面を引いている時間が多い。
これからについて
「建築家において夫婦という形は比較的多いように感じています。建築家の時間の流れは、とても独特。理解しにくいところもあると思うので、一緒に家業にしてしまうというやり方があっているのだと思います。基本は私たち二人なわけですが、たびたび沸き起こる課題をどう面白くしたらいいのか、様々な人を巻き込み、コラボレーションを通して知恵を出し合って作っています。」
「今後、取り組んでいきたいのは、年齢性別を問わずいろんな人が集まって、それぞれが異なる時の流れで活動をしている空間。保育園や学校、コミュニティセンター、公民館、そんな場所づくりに興味があります。自分たちに子供が産まれたことをきっかけに、子どもと家の関係性についても気になっています。子どもはこちらが提案したものをやすやすと乗り越えて、違う使い方をしたりする。それって、いい裏切り方というか、面白いですよね。」
須川ラボ建築設計事務所
www.sugawalab.jp
須川哲也・一級建築士
1972年 三重県生まれ。国際基督教大学教養学部中退。東京大学工学部建築学科卒業後、同大学院工学系研究科修士課程を修了。株式会社若松均建築設計事務所を経て、2007年に独立。現在は、国士舘大学理工学部非常勤講師も勤める。
須川真紀子・一級建築士
1979年 石川県生まれ つくば育ち。千葉大学工学部建築学科卒業。同大学院自然科学研究科デザイン科学専攻(建築学/都市計画学)修士課程修了。株式会社みかんぐみ一級建築士事務所を経て独立。日本建築家協会JIA建築セミナー実行委員。
最初に羽車の存在を知ったのは、結婚式の時でした。招待状の制作を依頼したデザイナーさんが用意したのが、羽車のカードと封筒だったんです。シンプルでクラシカルな雰囲気が印象的でしたね。最近でいうと、請求書を発送するための封筒を某ネットショップで購入したところ、届いてみたら羽車の商品だったんです。普通のものより少し質が高くて、良さそうなものを、と探して見つけたものでした。
今回は、A4フォルダーとそれを封入できる大判封筒を発注しました。建築家の仕事は、紙資料がとても多いんです。図面に、ポートフォリオ、参考資料、見積書…。今まではクリアファイルに入れていましたが、何か特別感のあるもの。そして須川ラボの名前を覚えてもらえるようなものを、という想いで制作しました。クライアントだけでなく、役所に持っていくことも多いので、インクや封筒の色は、華美になりすぎず信頼感につながるようなデザインであることも意識しました。
すでにある会社のロゴを生かせるデザインで、A4フォルダーと角2封筒の種類や印刷色を検討した。
大きな箱が届き何かなとドキドキして箱をあけると、紙の香りがふわっとひろがり、とても綺麗に入れられたフォルダーの束にドキドキしました。早速お客様にお渡しする資料を入れる封筒として使っています。私たちのいままでの名刺や定型封筒のデザインに新しいシルバーの印刷が継ぎ足たされ、気持ちを新たにしました。
サイズ | 442×310mm(A4フォルダー2ポケット) |
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紙 | ボード紙 ブラウン 270g |
印刷 | 箔押し加工 |
色 | シルバー |
価格 | 100枚 24,150円 / 500枚 62,500円(+税) データ作成 3,000円(+税) |
納期 | 校了後4営業日 |