「生まれたのは、デンマーク、コペンハーゲンの西部から車で約2時間の都市、コリングという街です。学生時代には、経済学と金融を学びました。卒業してから 1年間、アフリカ、アジア、オーストラリア、ニュージーランドなどの世界中をバックパッカーとして歩き回りました。日本にも二ヶ月間くらい滞在していましたね。旅を終えて デンマークに帰国した後、少し疲れを感じましたが、移動するだけでなく行った先の国でもっと多くのことを経験したいと思うようになりました。 そこで2014年に、ワーキングホリデービザを取得し日本に移りました。」
「何よりも、自分のことを良く知る事ができたと思います。特に一人で旅行するときは、自分自身で決めたルートを進みますし、多くの時間を自分自身に与えることができますから。たくさんの経験が積める事は言うまでもなく、見知らぬ人からの優しさがどれほど意味があることかを学びます。また、自分が質素なものを楽しめることにも気づきました。
他の人にオープンにならなければならない場面もとても多いですね。例えば、日常では(相性の違いで)おそらく友人になることはない、新しい友情を求めるられることもあります。それは私だけでなく、若者みんなにとって、とてもかけがえのない経験になるはずです。」
「訪れた国はどこも素晴らしかったですが、その中でも気に入ったのがネパールです。世界で最も高い山々がある環境で、何週間も飽きることなく、素晴らしい時間を過ごしました。特に、インド国境に近い高原では、野生のサイやゾウを見ることが出来ました。私にとってネパールは、カラフルな国という印象です。文化、伝統、宗教、都市、どこを撮影しても、その写真が色鮮やかに写るんです。特に、カトマンズを歩いているとその鮮やかさに驚かされました。ネパールは私にとって異国であることを強く感じる、刺激的な土地でした。このような独特な異文化に触れた事は、自分独自の感性として今に活きていると感じています。」
photo by Peter Buhl
「最初に訪れたとき、日本についての知識はほとんどありませんでした。寿司が日本食であること、東京は世界最大の都市というくらいの。しかし旅行中に感じたのは、日本はどこかで慣れ親しんだ母国に似ているんです。またそれと同時に、多くの点で非常に異なっており、そこが引きつけられた理由のひとつです。それから 旅行中に出会った「人」が、日本に引っ越したいと思わせました。その旅で出会った人で、今でも連絡を取り合っている友人も少なくありません。」
「日本でしか働いたことがないので、他の地域と比較はできませんが、私にとっては日本は働きやすい環境だと思います。というのも、デンマークと日本は文化が似ていると思うんです。色彩感覚やミニマリストの精神、常識を大切にする文化。その辺りが、私にとっては日本が働きやすいと感じている理由かもしれません。ちなみに、労働時間は日本の方がはるかに長い。デンマークではこんなに長く働かないのでそこは真逆ですね。(笑)」
ピーター氏がカフェをオープンしたのは2017年10月のこと、移住して間も無く23歳という若さでの挑戦だった。迷ったらやってみる、チャレンジ精神旺盛な性格の持ち主であることが伺いしれる。
「故郷デンマークを含む北欧エリアは、コーヒーをこよなく愛する国民です。その中でもデンマーク風の特徴は、浅煎りで酸味あるフルーティな味わい。日本では、そんなデンマークスタイルのコーヒーを出すカフェが見当たらなかったのです。それを紹介したいという想いが芽生え、自分のカフェを開くことにしました。日本で新しい感覚のコーヒーを共有したかったんです。」
PNB Coffee(目黒区青葉台)にて2015年10月~2017年12月まで営業していた店舗
「自身のカフェを運営している時から、デンマークのCoffee Collective(コーヒーコレクティブ)というコーヒーブランドが焙煎したコーヒー豆を愛用しています。Coffee Collectiveを選んだ最大の理由は品質。コーヒー豆とその焙煎方法が素晴らしく、一口飲んですぐにその個性的な味に魅了されました。今までに飲んだコーヒーとは違って、フルーティで美味しかった。」
Coffee Collectiveのコーヒー豆「Halo」(エチオピア産)と「Kieni」(ケニア産)。
ピーター氏は日本総代理店も勤めており、現在はECサイトにてコーヒー豆の販売を行っている。
「そして、ビジネスモデルにも共感しています。コーヒーはハイエンドな飲み物で、 勉強すればするほど興味深いんです。その最高峰にあるのがCoffee Collectiveのコーヒー豆だと思っているのです。一般的なコーヒー豆ビジネスの流れは、農家、地元のバイヤー、海外のバイヤー、コーヒーロースターというもので、当然のことながらそれぞれが手数料を取ります。特に農家は対価が十分に支払われず、辞めていく人もいる現状です。Coffee Collective は農家から直接購入し、品質を維持してもらうために相場よりもはるかに高い価格にて買取りしている。フェアトレード*¹+ダイレクトトレード*²を行っている、とても真面目な会社なんです。働いている人が情熱的なのも魅力のひとつです。」
デンマークのCoffee Collectiveはコーヒー豆の焙煎、販売の他、国内に6店舗を構えている
courtesy of Coffee Collective
「カフェ経営者として三年間、がむしゃらに働きました。カフェの運営は、とても挑戦的で難しく楽しいものです。特に外国で会社を設立するのは非常に大変で、会計、販売、マーケティング、価格設定などすべてを行う必要がありました。私はお店がゆるやかに(オーガニックのように)成長することを望んでいました。
いざオープンしてみると、週7日を3年間というハードワークさで疲れてしまいました。本当に好きな場所でしたが、店を閉じる決断は早かったです。」
「その後は、また新しいことを試そう!と、いつもの好奇心で前を向いていました。
オンラインショップ、ケータリング、ポップアップやショップワークショップを緩やかに行っていました。私にとっては、充電期間だったのでしょう。」
「そんなある時、武田さん(DDDホテルのオーナー)が訪ねてきました。 彼は私の店、PNB Coffeeの大ファンだったんです。そして、DDDホテルでカフェを立ち上げてくれないかとオファーをいただきました。とっても驚きましたが、彼が考える理想のホテルについて詳しく聞くうちに、参加したいと感じたのです。
早速、その店舗の名前を考えることを任されました。しばらく迷っていたのですが、「abno(アブノ)」という店名に決めました。この店名は、Abnormal(異常)という言葉に触発されました。そして突然 abno という4文字が頭に浮かんだのです。音と文字のバランスがとても気にいっています。」
ランチタイムには、日本の喫茶店カルチャーを取り入れたメニューが並ぶ。また、ピーター氏が厳選したコーヒーも楽しむことができる。
「喫茶店のランチには、たまごサンドやナポリタンスパゲッティなど日本独自の魅力的なものがありますよね。そんな昔ながらの喫茶店メニューにヒントを得ながら、abno風のひと皿に仕上げています。お好きなコーヒーとの相性も考えながらメニューを選んでいただけると嬉しいです。」
しつらい、一つひとつにもこだわりが見られる。
「コーヒー用の器は、一見すると日本風のカップですが、70歳を越えたフランスの陶芸家のものなんです。一目ぼれして、すぐに取り寄せました。 Copper matte raku と呼ばれる技法で作られていて、外側が銅で覆われ、酸化して美しい色になっていきます。手作りなので、全てのカップが一つひとつ個性よく仕上がり、本当に美しいのです。その他の道具のほとんどは日本製です。」
日本の喫茶店カルチャーを取り入れたランチ。
旬の食材を取り入れてシーズンごとに季節を感じる味を楽しむことができる。(上メニューは取材当時のもの)
コーヒー用のカップはLéon Serre氏の作品。
これからについて
「デンマーク人は目標を聞かれると、あまり語らないことが多いんです。なんというか、それを言うことによって、自分でハードルを上げてしまうようで。まさか自分が東京でカフェの経営をするなんて、想像していませんでした。でも今、私はabnoの運営をしています。abnoは本当に面白く魅力的な空間です。これから、新しいお客様に私が提供するこだわりのコーヒーを提供できることが楽しみです。「なるようになる」です。」
Q. 日本とご自身についてお聞かせください。好きな日本のブランドはありますか?
「品質、着心地、使い心地が最も大切だと思っています。ファッションについては、 2つのルールをもっています。黒を着ないこと。そしてファッションブランドのロゴがついたものは着ない主義です。」
Q. 環境問題について、日ごろから意識していることはありますか。
「難しい質問です。一個人では出来ることはとても小さい。もちろん、だからといってそれに取り組まないことはありません。私は、まず出来ることとして、プラスチックの使用量を減らすようにしています。」
Q. デンマークのコーヒー文化とは
「Hygge(ヒュッゲ)=ゆっくりとした時間を持つ、という文化に関連しています。コーヒーはいつもそこにあり、家族の団らんの中心的なもの。緑茶を飲んでいる日本の家族のような感じです。どこか居酒屋の雰囲気にも近い気がします。気心知れた仲間とのんびりリラックスして語り合う。そんな、日常生活にどこにでもある世界共通なひとときです。シナモンロールやケーキと楽しむんです。」
Q. 日本のコーヒー文化について
「最初に日本に来た時に、喫茶店の存在を知りました。本当に愛する日本文化の一つです。今でもその時に訪問した、広島の喫茶店を思い出します。カウンターの後ろに蝶ネクタイと白衣を身に着けたマスターがいて、4つのサイフォンでコーヒーを作っていました。今でも叶う事なら頻繁に行きたい喫茶店です。日本のコーヒー文化は日々変化しています。品質は間違いなくどんどん良くなっていくと感じます。」
Q. 夢を求めて海外に行くことを考えている若者にメッセージをお願いします。
「言うのは簡単かもしれませんが、私の最大のメッセージはまずはとにかく挑戦するのみです! そして、できるだけ若いうちに挑戦してください。 年をとるほど、より多くのものがのしかかってきて、精神的に海外への移動が難しくなります。 あなたのキャリア、あなたが築く関係、あなたが蓄積する財産と物事はすべて、あなたの荷物をより重くします。ですから、海外で生活することを夢見ているなら、やってみてください。それは簡単なことではありませんが、様々な事を学べるかけがえのない経験になります。」
Q. 3つの言葉で自分を説明してください
センシティブ、情熱的、そしてクール。私はいつもクールすぎると言われます、友人からは常に人から距離を置いていると。そんなことはないのですが(笑)
abno
東京都中央区日本橋馬喰町2丁目2−1 DDD Hotel 2F
Tel: 03-3668-0840
Cafe: 9:00-17:30
Bar: 18:00 – 23:00 (L.O) 火・水定休
dddhotel.jp/abno/
instagram@abno.jp
日本橋「DDDホテル」内にあるカフェ&バー「アブノ」。「look at coffee in a different light」をテーマに、新しい切り口でこだわりのスペシャルティコーヒーの魅力を提案している。ランチタイムは、コーヒーとフードのペアリングで独創的な料理が楽しめる。海外のお茶文化をテーマにした不定期のイベントも人気。夜は豊富なアルコールも提供。
「コンセプトは私が考えました。 最終的なデザインは、友人のDane Lasse Kusk氏が形にしてくれました。彼は、ドイツのベルリンで活躍した後、現在東京に拠点を置くクリエイティブディレクター兼デザイナーです。」
「カードの色はコーヒーを意識しています。コンセプトとしては4色の異なるコーヒー色があります。ダークブラウン(ブラックコーヒー)、ブラウン(エスプレッソ)、ライトブラウン(カプチーノ)、ベージュ(ラテ)と濃い茶色から、薄いベージュ色までをそれぞれコーヒーに見立てています。今回は、ダークブラウンとベージュの二種類のカードを作りました。」
サイズ | 91×55mm(ネームカード) |
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紙 | コットン スノーホワイト 232.8g |
印刷加工 | オフセット印刷 |
色 | 表・裏 2色 PANTONE2472 U/WARM GRAY 1(特色指定) |
価格 | 1種 500枚 25,450円 / 1,000枚 28,700円(+税) デザイン 完全入稿データ 0 円 納期 校了後3営業日 |
デザイン | 完全入稿データ 0 円 |
納期 | 校了後3営業日 |