「南アフリカ南西海岸沿いにあるケープタウンは、山と海、どちらも身近に楽しめる特別な街です。私の自宅やショップから、15分ほど歩けば、テーブルマウンテン国立公園があり、壮大な台地のテーブルマウンテン周辺では、ケープ半島固有の動植物を数多く見ることができます。例えば、Skinny laMinxの定番デザイン「Pincushion」は、テーブルマウンテンの麓で見られるプロテアという花をヒントにしているんですよ。私の周りにあるアフリカの自然や動植物は、デザインのヒントを与えてくれる大切なモチーフなのです。」
定番の「Pincushion」は、南アフリカの国花でもあるプロテアをモチーフに、北欧のエッセンスを加えてデザインされたもの。
「またSkinny laMinxのデザインには、北欧風のエッセンスが入っています。きっかけは、幼少の頃まで、さかのぼります。近所に住む母の友人のMonicaはスウェーデン人の家系で、彼女の自宅は随所に60年代のデンマークスタイルの家具が並ぶ素敵なお家でした。その北欧インテリアデザインの素晴らしさに感動したことが、私のデザインの原点です。もちろん、南アフリカ出身ですから、その一番の魅力である大自然は私のデザインには欠かせないテーマです。これらをミックスして生まれたのが、Skinny laMinxのAfro-Scandi(アフリカン×北欧)スタイルです。」
2010年にヘザーさんがたった一人でスタートさせたSkinny laMinx。南アフリカ国内だけではなく、欧米からも評価が高い。
「また、Skinny laMinxを支えてくれるスタッフはデザインと同様に大切な存在です。アシスタントとして働く男性1名以外は、すべて女性だけ15名で構成され、創業当初から働いてくれているスタッフも数多くいます。デザインから企画、シルクスクリーン印刷、裁断縫製、販売、商品の梱包発送に至るまで、すべて自社で行うため、業務は多岐に渡りますが、スタッフのチームワークが素晴らしく、そのおかげで、私の一番大切な業務であるデザイン制作に集中できるのです。彼女たちがいなければ、Skinny laMinxは成り立ちません。」
Skinny laMinxでは、プラスチック製の包装を使用しない努力をしています。例えば、商品タグはプラスチック製のものから、コットン製の紐に変更したといいます。発送用のダンボールには、紙製のガムテープを利用しています。資材コストを考えると大変ですが、世界的に脱プラスチックへと転換する中で、企業として環境に配慮することは大切と考えてのことだそう。さらには、資材一つとっても私たちらしくデザインしたいとヘザーさんは言います。
エコブリックス
「最近は、「EcoBricks(エコブリックス)」について学び、この活動を始めました。EcoBricksとは、リサイクルができないプラスチック製のゴミ(食品の包みなど)をペットボトルの中に詰め込み、それをブロックの資源として、地域の花壇や壁などに再利用する取り組みのこと。まず、会社や家で出たプラスチック製のゴミを集めて、ペットボトルの外側から押してもへこまなくなるまで、ゴミを詰め込めば完成です。ペットボトルには、想像以上にゴミが入ります。実際に始めてみると、日頃いかに私たちがたくさんのゴミを排出しているのか、気づくことでしょう。自然とゴミの分別も意識できるようになります。」
アップサイクル+地域貢献
「リサイクルという点で、Skinny laMinxが取り組んでいるのが、ハギレの再活用です。製品を作る過程でたくさんの生地のハギレが出ます。捨ててしまうのは簡単ですが、このハギレを利用して、何か新しいものを作れないかと考えていました。ある時、地元の縫製の女性チーム「Heartworks」という団体が、とても美しいぬいぐるみを作っていることを知り、Skinny laMinxのためにこのハギレを使用したかわいいサルのぬいぐるみを作れないか相談したのです。この商品は、「Minxy Monkey」と名付けて、今ではとても人気の商品なんですよ。」
「Skinny laMinxが目指すのは、ただのリサイクルではなく、アップサイクル。捨てるものを再利用するだけでなく、加えてセンス良い商品に生まれ変わらせる。それが私たちらしさかなと。ハギレが新たに価値あるものに変わることもうれしいですし、そして自然と新たな雇用を生み出すきっかけになったことを誇りに思っています。南アフリカでは、完全失業率が27%と高いため、地元の企業とコラボレーションすることで、少しでも地域に貢献したいと考えています。」
ハギレを再利用した、ぬいぐるみ「MinxyMonkey」、乳幼児向けシューズメーカーthe kid COLEのベビーシューズ。
クリエイティブな仕事に携わっている方に尋ねると、常に同じ答えが返ってくると思うのですが、一番の悩みは、ゆっくりと制作の時間がとれないことではないでしょうか。まずは、ビジネスが大切なので、日常の業務やタスクを優先するあまり、誰もが慌ただしく、時間に翻弄されています。しかしインプットの時間がなければ、新しい発想をアウトプットできません。クリエイティブな制作の時間が生み出すものは、必ず今後のビジネスが安定することにつながりますし、常に新しいアイディアを考えなければ、今のビジネスはいつか面白みのないものになることでしょう。
だからこそ、私は、毎週金曜日に、必ずクリエイティブな制作の時間を作っています。この活動を「Making Friday」と題してブログで紹介しています。具体的には、まずビジネスのことをすっかり忘れること。金曜日にこだわらなくても構いません。毎週少しでもクリエイティブな時間をとって、その手作業を楽しんでみてください。私の場合は、さまざまな技法を用いて、柄(パターン)をデザインします。ビジネスを意識しなくてよいので、結構奇抜なこともできて、まるで実験のように楽しんでいます。こうした時間を無駄だと思いますか?けれど気づけば、きちんとビジネスに取り入れることができる、何かを生み出しているんですよ。
Making Fridayから生まれた作品。色や形を考えながら自由に手を動かす。
Skinny laMinx
201 Bree Street, Cape Town, South Africa
www.skinnylaminx.com
Instagram @Skinnylaminx
Q. 商品やサービスで一番大切にしていることは何ですか。
最も大切にしているものは、「高品質」であること。商品そのものは当然のことながら、そのデザイン、作り方、包装、お届けしたあとのアフターサービスまで。ブランドとして全工程において最高のサービスであるべきです。お客様がその商品について何か特別な付加価値を感じていただけたら、その人は喜んでその商品を買ってくれると信じています。
Q. 代表として、Skinny laMinxのブランドをお客様にどのような言葉で評価されたいですか。
私の個性とSkinny laMinxの価値観はとても似ているので、Skinny laMinxについても、「フレンドリーで正直、高品質でステキなブランド」と人間らしい表現で評価されたいですね。
Q. Webサイト上の商品の写真は全て美しいですね。これらは全て社内で撮影しているのですか。
ほとんどの写真は社内で撮影していますが、一部はケープタウンの優秀なフォトグラファーに頼んでいます。また、インスタグラムの写真は私が全て撮っています。
Q. お気に入りのアーティストは誰ですか。
たくさんいて決めきれませんが、アーティストとして言えばRuth Asawaです。彼女はとてもスキルがあるし、作品のフォルムは本当に素晴らしい。デザイナーとしては、Alexander Girardが好きです。私が最近学んだ画家で気に入っているのはHilma af Klimtです。その作品はとても美しいと思います。そして、私の夫で、芸術家でもあるPaul Edmundsはもちろん世界で一番好きなアーティストです。
Q. プライベートな週末はどのように過ごしていますか?
週末は、夫のPaulと過ごします。二人とも本が好きなので、のんびりと読書にふけったり、私は観葉植物の世話をしたり、刺繍でタペストリーを作っています。たまに、ちょっと寒い大西洋のビーチで泳ぐこともあります。テーブルマウンテンやプロムナードの大自然を感じながら散策するのも好きです。Making Friday同様、週末のゆったりした時間も、クリエイティブな制作につながります。
週末はご主人のPaulさんと愛猫2匹とのんびり読書を楽しむ。
ご自宅から街のシンボル、テーブルマウンテンの頂上が見える。
Q. あなたの性格を3つの言葉で表すと何ですか?
フレンドリー、正直、Observant(鋭い観察眼の持ち主)。Observantについては、私の周りの自然や動植物を観察し、細部をすくいとる作業を、デザインにおいて大切にしているので、そうありたいと思っています。
Q. 紙製品の企業として、紙に関する質問をさせてください。あなたにとって「紙」はどのような存在ですか?
紙は、私が仕事で手掛けている生地と、とても似た存在です。まずどちらも手触り(テクスチャー)や厚み、色味が大切で、紙も生地も品質やデザインの価値を高めるものです。もし上質な紙と安価な紙に、同じデザインの柄を印刷したら、その仕上がりはもちろん、上質な紙の方が美しく、安価な紙とは明らかに異なることでしょう。
ご自宅にはSkinny laMinxの製品の他、アーティストのご友人の作品も飾られている。