1986年、内戦下のレバノンでの難民の子ども達への支援をきっかけに設立され、パレスチナでの聾学校の開校や農業支援など、さまざまな活動を続けている『特定非営利活動法人 パレスチナ子どものキャンペーン』。戦争被害を被ったガザの人々のために、人道支援*1として、炊き出しや支援物資の配布を行い、その後も障がいと後遺症を抱える子ども達のための、リハビリ支援や教育支援にも取り組んでいる。
2018年度決算報告書より、支援活動内容と割合
「わたしたちはNPO法人なので、一般の市民の皆様からのご寄付や会費、外務省補助金や国連、助成団体からの資金、そしてフェアトレード事業収益。この三つが大まかな収入源となります。使い道としては、現地事業・支援活動への支出、スタッフの人件費、事務所の家賃・光熱費のほか、広報誌の制作費や、イベントの経費、現地へ出向く際の渡航費などですね。」と語るのは、国内事業担当・松田純子さん。
国内事業担当・松田純子さん
「現在、東京の事務所で働くスタッフは約10人。国際協力機構(JICA)が管理している求人サイトがあって、そこには国際キャリアの求人情報が集まってきます。私もそのサイトを通して、ここに入りました。20代半ばに青年海外協力隊でヨルダンに2年間住んでいました。その時に、パレスチナ人の家族と仲良くなり、おばあちゃんがパレスチナからヨルダンにフライパン持って逃げてきた話などを聞きました。友人に「日本人はどこにでも行けるし、職業も選べる自由があるということ、それがない人もいるということを忘れないで」といわれたことが、帰国後もずっと心に残っていました。
帰国後は、デザイナーやソムリエ、ワイン輸入業に携わっていたのですが、同僚や友人を病気などで失くしたことがきっかけで、1回しかない人生悔いがないように生きようと。協力隊時代やさまざまな職を通じて得た経験も活かせると思いました。同僚には、大学生の頃からボランティアで携わっていて、そのままスタッフになった者もいますね。現地には、日本人駐在員や現地スタッフがいます。レバノンが2~3人、エルサレムが3人。現地スタッフは現地採用です。」
刺繍センターにて日本での取り組みを紹介
レバノン・パレスチナ難民キャンプでの補習授業
「情勢も不安定なので、行ける時期や範囲は限られるのですが、2018年3月にはレバノンに住む製作者のもとを訪ねました。現地では刺繍をしている女性に会って話を聞き、日本での刺繍事業の取り組みや反応などの報告をします。新商品の完成品や今後の予定なども相談します。
また、その他の支援活動を見学したり、現地スタッフから苦労話や日々の話を聞いたりしています。子どもや女性達への支援事業に関しては、写真や動画などで見ていて知っているつもりでも、実際の難民キャンプの空気感や匂いなど、行ってみないとわからないことは多いと感じました。建物も老朽化が進み、無理な増改築を繰り返しているせいか、複雑な建物も多く、部屋の中は薄暗いところが多いです。道路も整備されておらず、雨が降るとぬかるみ、長靴なしには歩けません。1~2メートルの狭い路地の頭の上には、水や電気などさまざまなコードが絡まりぶらさがり大変危険です。原付バイクも通り抜けますし、そんな緊張感のある道を子どもたちは日常的に通らざるを得ない状況です。」
老朽化が激しい難民キャンプは、ひと部屋4畳半のスペースに大家族が暮らす。電線が垂れ下がり、感電事故が後を絶たない
パレスチナの刺繍技術は、母から娘へ受け継がれる伝統。地域ごとにモチーフや縫い方に特徴があり、衣装の刺しゅうを見れば出身が分かるといい、その美しさは大英博物館にも収められているほど。難民となり、散り散りになっても、その文化は立ち消えなかった。
「日本でもパレスチナ刺繍を知ってもらいたいと思い、『パレスチナ刺繍 タトリーズ』というブランドを立ち上げました。パレスチナもレバノンも失業率が非常に高く、文化的にも女性が外で働くことは難しい。また稼ぎ手である夫が病気で失業中とか、死別など、子どもたちを抱えて生活に困窮している女性たちがたくさんいます。刺繍は、家で子どもの世話をしながらできる貴重な収入源なのです。刺繍を日本で販売し、フェアトレード事業を発展させることは、女性たちとその家族の家計を支えることにつながります。たとえ難民でも、刺しゅうができればお金を稼ぐことができる。自信も生まれます。」
レバノンにあるパレスチナ難民キャンプや、パレスチナ・ガザ地区のアトファルナろう学校で、職業訓練を受けた女性たちが刺繍をしている
「現在は主にオンラインショップで販売していますが、バッグ、ポストカードなどが人気アイテムです。こんなものはどうかなぁ、と自分でサンプルを作ってみて、それを現地のスタッフに送って試してもらいます。工業製品と違って完全に手作業なので、意外とサンプルは作りやすいんですよ。ブックバンドとかワッペン、バッグインバッグなども考案中です。刺繍のモチーフには動植物がよく使われます。パレスチナはオリーブやデーツ、オレンジといった作物がよく育つ、温暖な気候なんです。だからこそ土地の奪い合いになってしまったのかもしれませんね。」
金額の約4分の1が女性たちの手間賃に。その他は、材料費、刺繍プロジェクトの運営費、輸送や梱包費用、輸入関税や販売経費になる
パレスチナ刺繍のモチーフにはユニークな名前がついているものが200以上も。同じモチーフでも出身地によって形が変わるのも面白い。
「現在、日本に暮らすパレスチナ人は70人くらい。東京にはパレスチナ料理店は2~3軒しかありません。パレスチナ料理って?って感じですよね。まずはパレスチナを知ってもらう、興味を持ってもらうことが必要だと思っています。パレスチナ刺繍を紹介するため、2018年から19年にかけて、ギフトショーでの商談ブース、百貨店・商業施設でのポップアップ、フジロックフェスティバルなどに参加しました。どれも初の試みばかりなのですが、なかでも一昨年、横浜・赤レンガ倉庫で行った自主企画イベントは、なかなか大変でした。まずはパレスチナの駐日公館に足を運び、協力をお願いするところから始め、企画・集客まで手探りで…。ゲストスピーカーによる講演も行いましたが、パレスチナのフードを出したり、ダンスでお祭り感を演出したり、子ども向けのワークショップを行ったりと、できるだけカジュアルなイベント作りを目指しました」。
パレスチナフェスタではユナイテッドアローズの栗野氏の講演や、パレスチナ刺繍・料理のお話会、民族舞踏ダブケなどを紹介
同じポップアップショップでも、場所によりディスプレイを変化させている
「今後はコラボレーションも積極的に行いたいと思っています。ファッションブランドsnėėuwとのコラボは、知人にご紹介いただきました。デザイナーさんがパレスチナ刺繍を気に入ってくださり、2018年の春夏コレクションに取り入れていただきました。シャツやワンピースなどワンポイントで刺繍を取り入れているのでエスニック感も強くなく、さりげなさが素敵ですよね。あとは、ファッションの専門学校の授業の一環で、学生さんたちが刺繍を使った商品を考案する、という企画もやりました。私たちでは出てこないアイディアが生まれて、とても面白かったです。」
ファッションブランドsnėėuwとのコラボレーション
ステーショナリーブランドTOUCH&FLOWではクリスマスカードの販売を行っている
日本からできること。支援の形はさまざまでいい。
「パレスチナ難民という問題は、ニュースの中だけの存在で、なかなか身近なことと感じにくいかもしれない。「支援する=寄付する、という意識にとらわれず、まずはパレスチナ料理を食べに行く、イベントに足を運ぶ、ギフトで刺繍カードを送るなど、小さなこと、楽しいと思うことから始めてもらえたらと思います。日本にあるパレスチナ料理店は、東京・十条にあるBisanと、神田にあるアルミーナ。どちらも美味しいですよ。フジロックフェスティバルでは、NGOブースに集まってきたお客さん側から質問されることも多くて、興味を持っている若者が多いんだなと驚きました。
なかなか定期的にはできていないんですが、事務所を会場に文化や歴史を学ぶ勉強会を行っています。カフィーヤの巻き方レッスンや、料理や手刺繍を体験してもらったり。要望があれば出張教室にも行っています。興味がある人はぜひ一緒に動き出してもらえたらと思います」
QUESTIONS
Q. 大きな意義のあるパレスチナ支援ですが、同時に、危険や不安定が伴う仕事かと思います。それに見合った収入は得られているのでしょうか。
私は、国内事業担当ですし、海外事業においても、安全対策や管理が徹底しているので危険は少ないですが、確かに情勢的にも事業的にも不安定さは否めないと思います。資金源の一つである助成金なども必ず得られるものではありませんので、国内での販売事業などに力を入れています。まだまだ規模の小さい事業ですが、継続的に関わっていき、大きくしていきたいと思っています。非営利団体なので、ふつうの企業と違って売上に対するプレッシャーは少ないですが、いまのところ赤字事業なので、まずは赤字脱却を目指しています。報酬についてですが、他の団体の事情をよく知らないので、一概にはいえませんが、贅沢な生活をしなければ生計はたてられる給料はいただいています。
Q. これからもパレスチナへの侵攻は続くと思われます。このような世界情勢とご自身が行なっているパレスチナ支援との心の折り合いはどのようにつけていますか?
情勢はますます厳しさを増していますし、国際政治には口を出せない一市民であることは面映ゆく感じることは多いです。社会への提言を主とした活動をしている団体もありますが、当団体は現地での継続した活動を重視しています。政治的な状況はなかなか変えられませんが、市民レベルでできることをこつこつとしていくしかないと思います。1回しかない人生を後悔しないように、できることは諦めずに続けると決めています
Q. 世界に限らず日本でも様々な事情で貧富の差が広がっています。日本国内の格差社会とどのように付き合っていくべきか、松田さんはどう思われますか?
パレスチナと日本は、おかれている状況こそ全く異なりますが、若者が未来への希望を抱くのが難しい世界になってきている気がします。ただネガティブなことばかりでなく、それに対してポジティブな動きもありますし、それを応援していきたいと思いますし、自分も関わっていきたいと思います。例えば、日本でも子ども食堂が各地にできたり、若者や引きこもりなどの問題を抱えている人たちを支援している団体も多くあります。成功を収めた人が必ずしも幸せでないように、お金が少なくてもないなりに楽しく生きている人もいます。格差があっても、自分をあきらめずに自暴自棄にならない生き方を若い人たちができるように、大人としてしなければいけないことはたくさんあるかなと思います。十人十色、多様な生き方ができる寛容な社会になるといいなと。今は、パレスチナのことを紹介することを通じて、自分だけの世界に生きるのではなく、大きな世界を知ってほしい。生き方は一つではないですし、他人の目を気にしすぎて大切な本質的なものを忘れないでほしい。目や耳を閉じることは簡単ですが、人間は社会的動物で一人では生きていけませんので、個々が思いやりや助け合いの精神を忘れない世の中になってほしいですね。
Q. 自分の信じられる仕事を見つけることが難しい時代です。自己肯定感に悩む若者も多いと思います。松田さんはご自身の個性(アイデンティティ)を意識したとき、仕事に限らずどのような生き方を理想としていますか?
若いときは自己顕示欲が強く、自分の思考・好み・生き方など他者の目線を気にしすぎて意固地になっていた時期もありました。いわゆる「二十代に結婚して、子どもは2人ほしい」といったビジョンが全くない自分を許して(?)楽になったのは、30代過ぎてからでしょうか。没個性が個性といえるかもしれませんし。自分探しや自己投資にいそしんでいた時期もありました。皆生きている意味や存在意義みたいなことは、一度は考えると思いますが、家族や友人が健康で幸せであり、やりがいのある仕事をしているのが理想でしょうか。心身ともに疲れ果てて人生を終えるのは嫌なので、仕事や人、自分に対しても誠実に生きたいと思っています。そうすれば人と人がつながって、道が拓いてくるので。
Q. ご自身を3つの言葉で表すとしたらなんでしょうか?
マイペース 平和主義 消費者
国内事業担当 松田 純子
東洋大学商学部卒業。1998年から青年海外協力隊でヨルダン派遣。ヨルダンへの観光客誘致のためのパンフレットなどの編集制作業務に携わる。ほか、パレスチナ難民キャンプで子供向けのワークショップなどを行った。帰国後、デザイナー、ソムリエ、ワイン輸入業などを経て、2016年から現職。
認定NPOパレスチナ子どものキャンペーン
ccp-ngo.jp/
東京都新宿区下落合3-12-23 豊ビル4階
タトリーズ
Instagram @tatrees2018
刺繍カードを入れるための封筒を羽車封筒オンラインで購入していました。その後、刺繍カードの台紙も羽車さんにオーダーするようになりました。刺繍ブランド「タトリーズ」を立ち上げてみて意外だったのが、思ったよりもギフト需要があったことなんです。でも正直なところ、ブランドを立ち上げてから、パッケージのことまで頭が回らず、既製品のOPP袋にいれて発送するのみでした。ちょうどクリスマスも近くなり、贈り物シーズン前にギフト対応しておきたいと、羽車ショールームを訪ねました。
以前からHAGURUMA STOREで発注している刺繍台紙と封筒。メッセージカードとして販売中。
お客様からギフト要望が多かったものは、封筒に入るような薄い小物類、そしてクラッチバッグの二種類。なので、その二つを想定して考えることにしました。はじめは箱と封筒に加工・印刷することも考えましたが、予算的に難しそうでした。そこで、羽車さんから提案があったのが、オリジナルシールを貼る案。無地の箱にも封筒にも貼れるから、融通がきくんです。
難民女性が心をこめて作った商品は贈り物にも最適!なぜなら、もともとパレスチナ刺繍が持ち主の幸せを願った刺繍だからです。シンプルなクラフトBOXは、色鮮やかな刺繍との相性がよいです。封筒は、複数の人に贈り物をする人にも、中身がわかるので優しい思いやりが感じられるので、喜んでもらえると思います。それに高級感が増すので、ハンドメイドの1点ものの商品の正しい価値をお客様に伝えるのに最適なツールです。
箱のサイズは商品の平均値をとって、縦横高さの設計をしました。シールのモチーフにしたのは、タトリーズブランドのロゴにも使用している糸杉。地中海沿岸に自生する糸杉は、長寿や繁栄を意味する、パレスチナ刺繍の特徴的なモチーフのひとつです。わたしたちのコンセプトや、パレスチナ刺繍に込められた想いが伝わるようなラッピングが完成したと思います。
サイズ | 275x225xh35(箱内寸) |
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商品 | 糊どめ箱・サイズL自由 |
紙 | ボード紙ブラウン |
印刷 | なし |
価格 | 50個 16,600円(税込) デザイン提案 20,000円(+税) |
納期 | 8営業日 |
サイズ | 50×50mm(S686) オリジナル |
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紙 | HAGURUMA Basic プレインホワイト |
印刷 | フルカラー(デジタル印刷) |
価格 | 50×50mm(S686) 20枚 6,220円 / 30枚 8,080円 / 50枚 11,800円(+税) オリジナル 20枚 8,020円 / 30枚 10,780円 / 50枚 16,300円(+税) デザイン提案 20,000円(+税) |
納期 | 6営業日 |