「小さい頃はおとなしくて本が好きで、一人で妄想ばかりしている女の子でした。保育園の先生が言うには、お昼寝の時間に、なぜかハンカチを二つに折ろうとして『ここ(端と端)がそろわないから寝られません!』って泣いたらしいです(笑)。ローラースケートで遊ぶときも、架空のキャラと競走していました。
洋服に出会うまで、わたしは自分のカラを破ってこなかったのかもしれません。洋服というもので自分を人に見せることができると気づいた高校生のとき、あ、これ楽しいかも、と思って。大げさですけど、そのとき、人生面白いかも!って感じました。」
鈴木さんは、デザイナーを志していた訳ではない。着るもので個性を出したい、でも高価な服はそう買えない。そんな中で古着に目覚めたのがきっかけで、高校の時の洋服屋でのアルバイトがファッションとの出会いだ。ディスプレイ提案を担当させてもらったことがとても楽しく、スタイリストに憧れた。
服飾専門学校に入学するとき、基礎と技術を学びたいとまずは基礎科へ。その後、服の仕組みを知りたくなり、パタンナー科へと進む。デザイナーが描いたデザイン画をもとに型紙を作るのがパタンナーの仕事。各部の幅や長さを数字に落とし込んで設計図を描く、服作りを支える職人だ。
「卒業後の就職先はメンズブランドのパタンナー職でした。2年が経った頃、パターンを引きながら「袖のデザインがこうならおもしろいかも」と考えはじめていました。ちょうどその頃、デザイナーがデザインの細部にアイデアを求めてくださることがあって、創造する仕事を楽しむようになりました。その後、デザイナーアシスタントへの異動が決まったんです。
そしてパタンナーからデザイナーになった時、自分がすごく変わったんです。数字で表していたものが、感性に変わる。ゼロから創るデザインの仕事の方が自分らしいし楽しいとわかりました。デザインを一から学び身体的にはハードな日々でしたが、精神的にはつらくなかった。がむしゃらでした。」
プレスルームを兼ねたオフィスには作業スペースも併設。ここでアイデアを形にすることも。
異動の2年後、アシスタントからレディースデザイナーへと昇格が決まった。26歳のときだった。
パタンナーとしての実務経験を鈴木さんは肯定的に振り返る。
「今もその経験が支えになっています。縫製工場と話すときに、その効果が大きい場面もあります。パタンナーさんのこともそれぞれの特性がよく理解できて、自然と敬意が生まれます。」
自身のブランドを立ち上げたのは、2008年のこと。様々な出来事が重なったのを機に退社し、声をかけてもらった友人のブランドをデザイナーとして手伝いはじめたのだ。その時、自分が表現したいブランドも併行して立ち上げた。ブランド名は「ARIA(アリア)」。最初に作ったのは、古着のスカーフで作ったワンピースだった。
「個性を表現できるので、古着やヴィンテージものはずっと好きだったんです。ご縁のある古着屋さんの倉庫で、素材を調達させてもらい、古着のスカーフをすべて手縫いで縫い合わせたワンピースを作りました。すごく時間がかかったので1型しかなかったんですが。ブランドタグもスタンプで押して作りました。」
当時は今ほど古着の地位も高くなかったが、古着ワンピースは展示会で前職でお付き合いのあったバイヤーの目にとまる。1型だけのワンピースは、先端ファッションへの感度が高いことで知られるセレクトショップの売り場に並んだ。同デザイン、すべて生地違いのワンピース数点が店頭に並び、「1点1点が違う」というリメイクならではのARIAの世界観が表現された。
2016年10月に青山に開設した、YuumiARIAのオフィス兼プレスルーム。
2020 SPRING SUMMER COLLECTION は、古い柄などにインスピレーションを受けた、オリジナルデザインのパターン柄が印象的。
独立のタイミングはARIA誕生の2年後。友人のブランドから離れることになり、ARIAは手元に残されることになったのだ。
「それまでは流れに乗らせてもらって頑張ってきたので、独立しようと自ら決心したわけでもありませんでした。あの頃は本当に不安でした。資金もないし人脈もない。わたしには何もないのに、どうしよう。もう出来ないんじゃないかとまで思いました。」
しかし、「『何もない』は思い違いだった」と鈴木さんは思い直すことになる。友人や知人が手を差し伸べてくれたのだ。例えば、展示会を開く場所を貸すといった実質的なサポートがあった。そして何より、心が励まされたという。
「お客様からお手紙をいただいたんです。『あなたの作る洋服が好きだから、ずっと続けてね』というような。うれしかった。心境ががらっと変わりました。一人でもこう言ってくれる人がいるなら、そこにわたしのやるべきことはあると信じられました。」
モデルをロケ撮影したシーズンビジュアル
ビンテージのコレクションボタン
このことがあって、鈴木さんは不安への対処方法を見つけた。「不安って、不安がなくても、どこからでも生まれてくるもの。だから悪く捉えないで、解消するために今やるべきことはこれだな、とモチベーションに変えることにしました。できなければ次のやり方を考える。案外、不安が自分を先へ進めてくれるのかもしれません。」
古着のリメイクラインでスタートしたARIAに、2011年、コレクションラインが加わった。ゼロからオリジナルの既製服を作るコレクションは、鈴木さんの仕事の原点でもある。一方で、高校時代からその魅力にハマったという古着を生かすラインも引き続き展開。当初はどちらかのラインをバイイングして頂くことも多かったが、最近ではどちらのラインもセレクトして頂くことが多い。両ラインあってのブランドだということが浸透している。
2020 S/Sのテーマは「重ねた美しさ」。透け素材の生地にオリジナルフロッキープリントを施し、涼しさの中にも重厚感を取り入れた素材など、様々な重ね方を提案。
「2014年にブランド名をYuumiARIAに変更して、ちょうどその頃からブランドを知っていただくことが増えた気がします。自分の名前を冠すると、責任もより強く感じますし、洋服作りにいっそうのめり込むようになりました。」
「YuumiARIAのこだわりは、まず見て素敵と思ってもらえること。見た目は近寄って手に取ってもらうための大事なポイントですし、かわいい洋服って着る人の気持ちを明るくしてくれます。それから、着てみて驚きがあること。メンズブランドで働いていたこともあって、洋服には機能性も大事だと思っていて。この袖、すごく着やすいとか、ここにポケットがあって便利とか、着た人だけが実感できる喜びを用意したいんです。」
「リメイクライン」 古着という概念を飛び越えるようにドレッシーなチュールや刺繍などもデザインに落とし込んだ。
「コレクションライン」 着ている方が味わえる幸福感を大事に、ボタンを閉めたりすると隠れてしまうディテールなど、見えない部分にもデザインを取り入れた。
子育て中の現在は、独身時代に比べて働き方が大きく変わった。
「働ける時間は限られますが、その分集中の度合いが以前とまるで違ってきました。誰の一日にも同じ24時間がある。そのなかで何をする人生にするのか。一日の時間割を意識します。息抜きの時間も大切にしています。5分でも10分でも、心の向くまま自分のしたいことをする時間をどこかで取る。自分の思いを整理したり、本を読んだり。掃除も“好きなこと”扱いですね。掃除は毎日だとノルマになるので、好きなタイミングでやっていいことにして。そうすると、力を入れたり体を使ったりして部屋がきれいになって、案外楽しいんですよ。主婦としてはやや問題でしょうけど(笑)。」
ビジネス以外での最近の関心は、「食」に関すること。「食は自分の口に入るという大変身近なものですが、今までは自分自身の体と向き合うことは少なかったです。それが、子育てをし自分が歳を重ねると共に、家族や友人が食の見直し、体に入るもの大切さを教えてくれるようになりました。現在では積極的に農業体験に参加したり、直接農家さんのお野菜を購入させて頂いたり、素材を生かした料理を心がけるようになりました。外での食事では、もちろんジャンクなものも美味しく食べたりします。ヴィーガンの友人と、自分がヴィーガンではなくても皆が楽しめるオーガニックなどのレストランに足を運んだりすると、そこで身体が内面から喜んでいる感覚になり、やはり口にするものの大切さを実感します。」
これからについて
「コツコツと洋服作りを続けたい。新しいインスピレーションを持ち、ものづくりをアップデートしていきたいです。自分が年を取ったときに、昔からのお客様も若い方も着られるような、そこに垣根を感じさせないエイジレスなブランドになればと思います。
実際、長く着てくださる方もいらっしゃいます。だから、発表するそのときに新しいというだけではなくて、時を経て自分だけのヴィンテージになった良さも見つけてもらえる洋服を作りたいんですよね。
買ってくださった方の姿を、たまにSNSで目にすることがあります。旅行や外出の機会にYuumiARIAの洋服を選んでもらえて写真として色あせずに残っていくのを見ると毎回本当に感激します。10年以上やってきて数回だけですが、街中でお見かけしたこともありますよ。もう、うれしくて追いかけたくなる(笑)。心のなかで『ありがとうございます』って言いました。
それから個人的に注目しているのは、普段はエコバックを持ち歩くことやゴミを出さない暮らしのこと。少しの事でも意識を高く持って、小さなことからコツコツと自分の意識を変えていくことは、より自分の考えもアップデートされていくような感覚になるので、大事にしています。」
YuumiARIA(ユウミアリア)
代表 デザイナー 鈴木ゆうみ
2008 S/Sより古着をベースとした1点物のリメイクラインスタート。2011 S/Sよりコレクションラインスタート。UNUSUALをコンセプトに、ベーシックな女性らしさの中にメンズウェアにある機能性を取り入れた、デザイナーが日常必要だと考える、本当の意味でのリアルクローズを展開。
展示会の案内は今までも紙の案内状をお送りしていましたが、より気持ちを伝えたいと考えたときに、その思いが形になりそうな羽車さんを思い出しました。独立当初にルック(カタログ)を入れる封筒をオンラインストアで購入しお世話になりましたので調べてみたところ、すぐ近くにショールームがあるとわかり、その日に初めてお店を訪ねました。丸一日でもいられると思うほど楽しかった!
コレクションのキーになる柄を全面に印刷する、古着リメイクのラインを持つブランドなので再生紙を使う、という二つの考えだけ持ち込みましたが、プロの方が相談に乗ってくださって、いいものができました。ボード紙に白で印刷すると、地の色が透けて白が優しい色になるんですね。
ちなみにこれ、「料金別納」と白で印刷した場合、文字色が薄くて郵便局で処理に困る可能性があると聞いて(かといって濃い色は入れたくなかったので)、切手を貼ったんですよ。会社は今、二人体制なので手分けをして、結構な量の切手を(笑)。でも、人の手を介した分、温もりがより表現できたかなと思います。わたし自身気に入っていますし、お届け先にも好評でした。
サイズ | 105×150mm(Pカード) |
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紙 | ボード紙 ブラウン450g |
印刷 | オフセット印刷 |
色 | ホワイト・ブラック |
価格 | 500枚16,850円 / 1,000枚 21,400円(+税) 完全データ入稿 |
納期 | 校了後4営業日 |
サイズ | 162×114mm(洋 2 カマス封筒) |
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紙 | トレーシング 105g |
印刷 | オフセット印刷 |
色 | ホワイト |
価格 | 500 枚 16,800 円 / 1,000 枚 26,000 円(+ 税) 完全データ入稿 |
納期 | 校了後 3 営業日 |