STORY

五感を刺激する海外研修(中編)台湾

五感を刺激する海外研修(中編)台湾

2006年からスタートした羽車の海外研修。人材育成の一環として、のべ60名以上が参加しています。中編は、エネルギッシュな印象のアジア圏、台湾研修に参加したメンバーが登場します。


企画部/田中 宮下、ウイングド・ウィール/戸倉

台湾の伝統と最新カルチャーを探しに

田中
台湾は日本から3時間のフライト。親日の国、活気のある屋台、ノスタルジックな台湾が残る九份など、気軽に観光で訪れる方も多い国ですね。今回の台湾研修では、歴史や伝統的な一面と、最新の台湾カルチャーを感じるエリアを総勢14名で訪問しました。

世界四大博物館の1つ、故宮博物院。およそ70万点の所蔵品すべてを見るには10 年以上かかると言われる

世界で唯一の活字を守る 活字工房へ

戸倉
今回とても楽しみにしていたのが「日星活字(日星鑄字行)」。1960年にオープンした日星活字の二代目オーナー 張さんにお話を伺いました。こちらは世界で唯一 繁体文字の活字を作り続けている活字工房です。繁体文字とは画数が多い中国語の「旧字体」で、漢字の平準化がすすめられた1950年以前の伝統的な書体です。

まずは活版印刷の技術や歴史、活字の作り方について丁寧にレクチャー

店内の活字は、3つの書体(明朝・ 楷書・ゴシック )それぞれに文字サイズは 7つ、各書体に 8,000字 ほどの漢字がある

くっきりと表現される活字の活版印刷を体験。中国北宋代の詩人が弟を思って詠んだ詩に、羽車訪問日を入れて

田中
工房の一角に、活字をデータ化するためひたすらトレース作業を続けるスタッフがいました。手元には、赤字訂正が細かく入った校正紙。張さんがこの作業を厳しくしているのは、台湾の活字を歴史的財産として残す思いがあるから。活字の文化や事業を若い世代に伝えようと、張さんは啓蒙活動や地道な作業を続けています。印象的だったのは、技術の伝え方について「若い人に伝える時、自分のやり方そのままでは伝わらない。相手に合わせて言い方も教え方も変えるように模索している」というお話。私たちも仕事を教えたりする時、うまく伝わらないことはありますが、どこでも誰でもそんな悩みはあるのですね。でも、使命感や誇りをもっているからこそ、伝え方を変えているという優しさを感じました。働いているスタッフは皆にこやかで、とてもよい雰囲気でした。
宮下
私は普段デザインの一部として、ある意味自由に書体を選んでいますが、書体を守るということや一文字ごとの細かな作業をみて素直に感動しました。私が使っている書体もこんな風に作られてきたこと、そしてこの地道な作業が確かに伝統をつないでいると、羨ましくも感じました。
戸倉
台湾ではおしゃれな活版印刷のショップカードなどもよく見かけましたね。台湾らしさを感じるというより、日本のお店で見かけるような印象のデザインや、厚みのあるクラフト系の紙を使った存在感のあるものが多かったです。台湾の若者の間では、ZINEの発行やもの作りのマーケットがとても人気だそう。たまたま見かけた手作り系のイベントマーケットでは、若者が集まり大変な熱気。凝ったデザインパッケージなどが揃っていました。

ホテル近くで行われていたクラフトマーケット「島作」には、日本と台湾の作家が集う

リノベーションで生まれた最新文化発信エリア

戸倉
一方で洗練されたデザインの再開発地域も、また違った魅力がありましたよね。 タバコ工場の跡地をリノベーションした「松山文創園区」は、歴史のある建物と緑が融合した都会のオアシス的なエリア。アートイベント等も開かれる文化・芸術活動の拠点だそうですが、とにかく広くて清々しい景色が気持ちよい場所でした。早朝には太極拳をする人もいて、台湾らしい風景。歴史的建造物を活かした閲楽書店(Yue Yue Bookstores)は、セレクトした書籍や雑貨とこだわりのコーヒーが楽しめる洗練されたお店でした。
宮下
宿泊した「誠品行旅 Eslite Hotel」も松山文創園区内にありました。まずはこのホテルのアイコンともいえるロビーの壁一面の5,000冊の本が並ぶ本棚に圧倒されました。館内には、台湾のアーティスト153名の作品が飾られ、調度品もシンプルで美しいデザインのものばかり。ホテルの方に館内ツアーをお願いしスイートルームも見させていただきましたが、台湾の伝統に加え新しさも融合した快適な空間が演出には思わずため息が。。。私も含めて羽車スタッフは思い思いの場所でアートな空間を写真におさめていて。改めて、みんな好きなんだなぁと思いましたね 笑

ホテルのステーショナリーも統一されたイメージ

戸倉
華山 1914 文創園区というエリアも、リノベーションにより台湾文化の発信地となったエリア。元々は国営の酒造工場でしたが、台湾の若者たちがこっそり壁画を書いたりする場所になり、徐々にアートな空間になっていったとか。今ではカフェやレストランも加わって、人気の観光スポットです。女性クリエイターユニットがプロデュースする「好樣思維/VVG(Very Very Good)」は、台湾で人気のショップで、本や雑貨、DIYパーツが並び洗練されたライフスタイルを提案していました。ただ、台湾独自のスタイルはあまり感じられず、日本にいるような錯覚がしました。
田中
このエリアに店舗を構えるFujin Tree(富錦樹)の代表呉さんに伺ったお話では、2014年のひまわり革命(学生運動)以降、少しずつ若い世代や個性的な出版社など中小企業による出店が増えているそうです。台湾は流行り廃りがとても早いのだとか。独立系の企業が台頭していくことで、これからさらに台湾の独自性が感じられるものに変化していくのかもしれませんね。

環境がかわると、人も変われる体験

田中
かつて金鉱で栄えた頃の台湾を味わえる「九份(きゅうふん)」や、夜中までにぎやかな「夜市」。台湾庶民のリアルな生活が感じられるエリアは何を見ても楽しく台湾らしさがいっぱいでしたね。こと食文化については、独自の文化が色濃いと感じました。イタリアンやハンバーガー屋さんなどあまり見かけませんでしたよね。老舗の台湾茶のお店では、お茶文化の奥深さやこだわりを感じました。研修のことを忘れるくらい楽しみましたね。
戸倉
研修前には、台湾のオリジナルガイドブックを作りました。メンバーの立候補制で内容を選んで、私は「九份」係に。他に、小籠包係、台湾茶係、中国語係もありました。限られた時間の中でなりたちや最新情報を調べて、皆に魅力を伝えるガイドにまとめる作業は、思った以上に頭を使いました。現地についたら、ガイド片手に説明プレゼンまでするんです。「読み手の立場になる」「要点を魅力的に伝える」ことのトレーニングでしたね。
宮下
異文化に身を置くと、未知のものに感覚が刺激されるのか感情が開放されますよね。研修として台湾で学んだことももちろんですが、意外に一緒にいったメンバーと話す時間も長かったです。仕事の仲間と何日も海外で過ごすって、また違ったパワーが必要でしたよね。
田中
会社の仲間と、しかも部署を超えて集まったメンバーなので、ほぼ初めましての方もいますよね。初めは確かに緊張したりぎこちなかったりするんですが、過ごす時間に比例して「この人ってこんな一面があったんだ!」と新たな発見があるんです。1日のことを振り返ったミーティングで、「伝統的な活字工房 と 最新スポットの雑貨屋さん、もしも自分が働くとしたらどちらを選ぶか、それはなぜか」というお題でディスカッションしました。仮の話とはいえ、自分と向き合って考えをまとめ、同僚に聞いてもらうという体験は新鮮でした。真剣に相手の考えを聞くことで理解が深まり、以前に比べて、断然コミュニケーションをとりやすくなりましたね。
戸倉
私はフリーの時間に他のメンバーの仕事への向き合い方を聞いて、とても刺激になりました。私は普段、店頭で接客をしているので、例えば工場にいる製造部の方がどんな思いで仕事をしているのか、気になっていたんです。普段聞けないことを話せる不思議な力がありましたね。帰ってから仕事が前より楽しくなりました。


- 後編 シンガポールにつづく -

番外編 ここが良かった!スタッフおすすめスポット

「誠品行旅 Eslite Hotel」 「松山文化園区」


日本のTSUTAYA書店がコンセプトを参考にしたと言われている「誠品書店」。その誠品グループが手掛けたホテル「誠品行旅 Eslite Hotel」に宿泊しました。空間、アート、アメニティ全てが洗練されていました。煙草工場をリノベーションしてオープンした「松山文化園区」内にあり、緑と芸術を楽しむカルチャースポットとして楽しめます。


「FUJIN TREE Landmark」 「華山1914文創園区」


「華山1914文創園区」内にある「FUJIN TREE Landmark」。台湾出身の作家・アーティストの作品をメインに、お店は生花のお店、雑貨を扱うセレクトショップ、カフェが一体となった複合施設。おしゃれな空間で台湾の最新カルチャーをキャッチできます。


茶藝館「小慢(シャオマン)」


お茶を楽しみながらゆったりと過ごせるお店です。落ち着いた店内には茶葉や茶器をセンスよくディスプレイ。日本に留学経験のある店員の方が日本語で説明してくれるので理解が深まります。形式にこだわらず、日常生活の中で楽しく優雅にお茶を楽しむ という概念から生まれた「茶藝」を体験できます。