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商品開発者の、考える日々。

商品開発者の、考える日々。

こんにちは。羽車の企画広報部、マネージャーの炭谷と申します。新商品を考えたり、販売方法を考えたり、加工技術を考えたり、イベントやWEBを考えたり。そんな日々を送っています。どんな風に開発に取り組んでいるのか、企画担当の日常をありのままにお話します。

リアルであたたかい、
まるで分身のような封筒づくり

手紙っていいですよね。人から人にリアルな実物が届く。なんの紙を選んだのかとか、筆跡で書き手の想いを感じられる。内容以上のものが伝わると思うんです。大げさに言うと、自分の分身を渡す、みたいなことかなぁって。羽車の封筒も、情報だけが届けばいいわけではない。とにかくサイズや紙の種類を増やす、というのもちょっと違う。

常に意識しているのは10年前も10年後も好きかどうか。そして、ジェンダーや年齢を意識しないこと。できるだけフラットでウィットに富んだものを揃えたいんです。

同じ企画スタッフと意見交換したり、じっくり商品と向き合ったりしながら商品開発が進む。

開発に関わったシャープなかたちのDLS封筒。フォーマルな封筒でも、蛍光カラーの縁取り加工で軽やかな印象になり、男性でもお礼状にスマートに使える。

まず第一に品質を保つこと。お客様のニーズ、時代性や新しい挑戦、そして、羽車の核となるクラシックさ。それらをあわせて考えていくと、とても狭い範囲の人に向けて作っているようにも思えます。でも、その円を深く掘り下げたり、少しずつずらしてみたりしながら、新商品を開発していけたらよいのでは、と。これは今後も続いていく課題ですね。

大切なのは、信頼できる仲間との関係性

キレイに印刷されているだけではなくて、それで何を伝えたいのかが肝。お客様の希望の半歩先を行く商品開発がしたいですね。こんな表現知らなかったと思っていただきたいんです。

商品開発って、デスクに向かうだけではなくて現場にも頻繁に行くんです。工場内の技術室スタッフの井上には、よく「今度、こんなことしたいんだけど」と相談して、鉄工所で機械を改造してもらうんですよ。一人で考えることも多い企画の仕事ですけど、そういった信頼できるスタッフが社内にいることで、なんとなく感覚を共有している気持ちでいます。

現場スタッフには、細かなニュアンスを分かりやすく伝えて感覚を共有。

外部のデザイナーやイラストレーターとの関係性も大事ですね。ガチガチに固めない方が クリエイティブなものが生まれやすい気がしています。表現に関しては信頼しているので、表面的なデザインはすべてお任せします。その代わり、不要なものをそぎ落とし、かっこいいものを追い求めてほしい、というようなことを伝えています。良い正解はどれだろうと、一緒に作りながら学んでいるのかもしれないですね。「羽車のプロジェクトならやりますよ」、と言っていただける関係性がとても嬉しいですね。

初めて納得できた商品 
No.602動物カード

開発した商品の中で、思い入れのあるアイテム選ぶとしたらNo.602シリーズという活版印刷のミニカードです。新しい商品を企画するときは、まずコンセプト作りからスタートしますが、大いに悩みながら、まだ見ぬ商品をイメージするのは楽しい時間です。No.602の場合、動物たちの自然な美しい姿・表情を活版印刷で表現し、遊び心あるカードに仕上げることでした。そこで、まずクリエイターさんに、動物たちのありのままの表情を切り取って欲しいと伝え、何度も何度も繊細なタッチのスケッチをお願いすることから始めました。動物園に通いつめてもらったんです (笑)。

ところが、だんだんとスケッチが集まってきた頃、ひとつの壁に当たりました。繊細な鉛筆画のラインは、活版印刷での表現が難しいんです。ハンコのように印刷しますから、細すぎるラインは印刷されず、動物の表情が単調になってしまったんです。 そこからは、この繊細なタッチを活版印刷で表現するにはどうしたらよいか、というチャレンジに変わりました。印刷スタッフの上田には、もうそれこそ何度試作をお願いしたかわかりません。やっと納得のいく刷り上がりを見たときは、肩の力がふぅ~と抜けてしまったのを覚えています。

動物カードは全37種類。年齢性別を問わないロングセラー商品。

最後の工程で、カードを動物型にくり抜きました。動物の形に沿ったラインなので、すべて違う形でひとつとして重なるものはありません。仕上がった商品を並べたとき、動物の多様性や美しさ、活版印刷の味わい、個性的な形、すべてが揃ってやっとコンセプト通りの商品になったと思いました。単なる「かわいい動物のカード」ではなく、自分らしい名刺や、メッセージカードに自由な発想で使っていただける、そんな懐の深い商品になったことがよかったなあ、と思っています。

海外の見本市(ドイツのペーパーワールド)に出展した時、「SLOW」というトレンドキーワードにNo.602を選んでいただきました。急激なスピードで変化する生活環境の中での、SLOWな価値観(職人の加工、地球環境、あたたかくリラックスできる)を評価いただき嬉しかったですね。

紙は厚みのあるコットンペーパー。自分らしい動物を選ぶのも楽しい。

初めて単独ブースで出展した、世界最大のステーショナリー見本市 paperworld 。日本の繊細な色使いや文様・デザインも好評だった。ドイツ フランクフルトにて。(2009年)

年末のカレンダーも、
お客様との接点だと思う

代表の杉浦からは「ブランド全体を引いた目線で見てほしい」と言われています。それは入社した13年前から今でも変わりません。羽車のイメージは、お客様とのすべての接点から伝わりますので、そこは丁寧に提案する、という意味なんです。Webサイトだったり、納品用のダンボールだったり、工場内のなにかだったとしても。

例えば毎年作るカレンダーは、オリジナルのコットンペーパーに活版印刷でごくシンプルに仕上げています。デザインの要素をそぎ落として、どんなオフィスにも馴染み、毎日見ても飽きず、紙の風合いや活版のアナログ感にホッとする、そんなカレンダーです。なんとなくそこに、羽車らしさを感じてもらえればと。カレンダーのどこかにちょっとした遊び心を加えるのも、密かな楽しみなんです。

紙ごとに動物柄が違う商品ケースは、届いた時の楽しさだけでなく出荷ミスも防ぐ。(写真左)

2018年版カレンダーは、オリンピックイヤーにちなんで金曜日を「金メダル」に。(写真右)

長く愛されるものをつくりたい

「封筒会社の企画って、何するの?新しいもの必要なの?」って友人に言われたことがあるんです(笑)。羽車に入社したのは13年前で、その時から企画を担当していました。以前は雑貨やギフトに関わる仕事でした。どちらかというと、モノに表面的なお化粧をして届けるということが多かったように思います。

形やサイズ、紙の素材、印刷色、加工の方法など、さまざまな要素を重ねあわせて考える。

もともと紙製品が好きでしたが、羽車に入ってその長い歴史や製法を知るうちに、紙製品の企画にどんどんはまっていきました。出したら消える、旬が過ぎたらセールをする、みたいな短いサイクルではなくて、覚悟を決めて商品を出して、何年もかけて売っていくんです。

年間の計画やノルマはないけれど、常にいろいろと同時進行しています。思い返せば、この13年間、暇だと思ったこと、考えなかった瞬間はありません。時には胃が痛くなるような思いもするけど、没頭できることはとても楽しいです。