「このグレーの箱の感触がお気に入りです。銅製のホッチキスが美しく、紙質も色も申し分ない。箱の作りも完璧で、それでいて手作り感があります。人間が愛情を込めて作っていることが伝わってきます!お客様もみんな、このパッケージを気に入ってくれていますし、作品を梱包して箱に入れる度に自分のブランドに自信が持てます。」
Ros Leeさんのクリエイティブのルーツは両親にある。彼女の両親は陶芸に使用するさまざまな材料を仕入れる仕事をしながら、陶芸スタジオも経営していた。生活の中に、アートや陶芸があることが彼女にとってはごくごく自然なことだったのだ。
優しく目を閉じた表情が描かれたPolkarosの陶芸作品
「陶器に囲まれた環境で育った私は、アースカラーの作品に囲まれていました。色とりどりの陶芸作品を見るたびに、ワクワクしたのを覚えています。それがきっかけで、自分もカラフルな陶芸作品を作りたいと思うようになったのだと思います」
そんな彼女が自らもブランドを立ち上げることになったきっかけは、実は日本にある。誰もが忘れることのできない、あの大きな天災が大きな一歩を踏み出す勇気をくれた。
「私は日本で工芸デザイン(テキスタイルデザイン専攻)を学び、技術を磨きました。卒業後はライフスタイルのプロダクトデザイナーとして働き、合計11年間日本に住んでいたのですが、Polkarosを東京でスタートさせた2011年にちょうど東日本大震災が起こりました。この経験によって、人生は短く、限られた時間の中で何か有意義なことをしなければならないと私は気づかされました。そして、工芸品(陶磁器やテキスタイル)とライフスタイル製品への情熱を込めたブランドを作るという夢をさらに追い求めるようになりました。アートが私に希望をもたらしてくれたように、私も日常生活の中で楽しめるアートを作りたかったのです。また、私の日本の工芸品への愛情を、ブランドを通じて世界の人々に伝えたいと思いました。私たちの作品のおかげで、私は世界中の人々と友達になることができましたし、お客様との出会いと交流の中で、ブランドは今も成長し、進化し続けています」
ブランドを通じてRos Leeさんが伝えたいと思う、日本の工芸品の魅力とは?
「日本の工芸品は、文化や日常生活の一部であるところがユニークだと思っています。例えば、日本の工芸品は、日常的に使う機能的で使い手が喜ぶものを、職人によるハンドメイドで心を込めて作っています。また、手づくりならではの“不完全さ”も大切にされています。やっぱり、良きハンドメイドは、使う人の心を和ませてくれますよね」
日本の工芸品へのそんな思いは、自身の作品づくりにも大きな影響を与えているという。
「日本の工芸品の影響もあり、ハンドメイドの良さを残しつつ、しっかりと作り込むことにこだわっています。私の作品は、幸せや希望に満ちたものであると自分では思っているのですが、鉢の表情や色、模様などを通して、お客様にもそれを感じていただけるといいなと思っています」
『Polkaros』の作品は、アイコンとして人気のある優しく目を閉じた表情が描かれた陶芸作品をはじめ、どのアイテムも全体のフォルムから穏やかな存在感を放っていて、ポジティブなインパクトを感じさせるものばかりだ。しかし、ここまでブランドを成長させてきた過程には壁にぶち当たったこともあったのではないだろうか。
「多くの困難を経験してきましたね(笑)。最近の困難のひとつは、オーバーヘッド(経済)を管理することです。シンガポールの生活費と家賃はとても高いのです。定期的に商売をしていても、月によっては家賃を払える程度の収入しかないこともあります。陶芸作品はどうしても制作に時間がかかるので、売れない月もあるんです。しかし、今のところ情熱が私を支えてくれています。家賃がもう少し手頃な新しいスタジオを見つけ、ビジネスを維持できるように仕事のやり方を変えているところです」
最近では、自身のブランド「Polkaros」の展開以外にも、グローバルな有名ブランドとコラボレーションを積極的に行なっているRos Leeさん。特に、コスメブランド「ゲランジャパン」のコンパクトのために描いた美しい白鳥のイラストは、ご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「ゲランジャパンは、ブランド創立190周年を記念した限定コンパクトを発表されるということでそのアートワークの依頼を受けました。繊細な女性らしさを表現するために純潔とエレガンスを表す白鳥をモチーフにして、Polkarosの特徴のひとつである“まつ毛のある閉じた目”を描きました。」
ユニクロシンガポールとのコラボレーションでは、Tシャツなどのアイテムにプリントできるアイコンをデザインしました。Polkarosは日本で始まったブランドで、日本の工芸文化から多くの影響を受けているので「Icons of Japan」というテーマを掲げました。私が愛するあらゆるものから簡単にインスピレーションを得ることができました。シンガポールのショッピングモール「オーチャード・セントラル」にあるユニクロへ行けば、いつでも私たちのアイコンを使ってTシャツやトートバッグにプリントしてもらえます! 」
自身のクリエイティブに向かう時とコラボレーションを行う時。モノづくりのアプローチや発想方法で異なる点とは?
「プロジェクトのクリエイティブな方向性を見定めながら、『彼らの世界の中で私たちのブランドやキャラクターがどのように存在するのか』を考えるようにしていますね。また、その逆もしかりで、『私たちのブランドやキャラクターの世界の中でそのブランドがどのように存在するのか』を常に意識して作品作りをしています」
さまざまなテーマの作品づくりに意欲的なRos Leeさんですが、いま現在はどんな作品に取り組んでいるのでしょうか。
「陶器の新しいコレクションに取り組む傍ら「パトロン」というプロジェクトを始めたところです。私のクリエイティブな旅や仕事に興味のある人たちとのコミュニティの場です。また、新しいポッドキャストも始めていて、職人やアーティスト、デザイナーなどクリエイティブな人たちを招いて、さまざまなテーマでおしゃべりをしていく予定です」
The Polkaros Potcastの収録はRosさんのスタジオ内で行い、様々な分野で活躍するアーティストとのトークセッションを紹介している The Polkaros Potcast
他のアーティストやブランドとのコラボレーションを積極的に行い、他ジャンルのエッセンスも吸収し続ける「Polkaros」の世界は、きっとさらに拡充していくでしょう。それでも“今”と“現在地”にとどまらず、広い世界を常に視野に入れながらクリエイションを続けるRos Leeさんがいま見据える未来とは?
「私の目標は、クラフトの楽しさを広め、アートを通して困っている人たちに希望を与えることです。新しいスタジオは、私自身が作品を作るだけでなく、アートやクラフトを探求する場を必要とするクリエイティブな人たちが集うスペースにしたいと思っています。私たち以外のアーティストも紹介する機会を作りながらお互いに成長し合える。そんな空間にしたいですね」
最近新しいアトリエも構えたというRos Leeさん。多忙な日々が続きそうですが、そんな中でも大切にしたいのは、小さな自転車で出掛ける束の間のリフレッシュの時間。
「休日は、折りたたみ式の小型自転車でビーチまでサイクリングに行くのが好きです!片道1時間半ほどかかりますが、風が気持ちよく、クラークキーやマリーナベイサンズなどの有名スポットを通りながら、シンガポールの景色を楽しみます。ビーチに着いたら、簡単なピクニックランチを食べたり、ホーカーセンターでビールを楽しんだりして、夕方には自転車で戻ってきます」
ご自身を3つの言葉で表すと?
「誠実、勤勉、真摯」でありたいと思いますね。
POLKAROS 代表 Ros Lee
POLKAROS
https://polkaros.com/
instagram @polkaros
POLKAROS(ポルカロス)は、シンガポール出身アーティスト、ロス・リーによって設立されたライフスタイル&雑貨クリエイティブブランド。
東京にて10年間仕事をしていたロスは、日本の文化や伝統工芸の魅力に触れ、彼女のデザインや作品はしばしば日本の伝統工芸や文様からインスピレーションを得ている。現在は母国に戻り、POLKAROSの工芸と雑貨の魅力を世界に発信し続けている。
「私たちの製品は手作りなので、その手作り感に合って、Polkarosらしい紙やパッケージを普段から探すようにしています。パッケージは単なる“梱包”ではなく、作品づくりの延長にあり、大切にしている世界観やコンセプトを伝えるための大事なピースです。」
「このグレーの箱の感触がお気に入りです。銅製のホッチキスが美しく、紙質も色も申し分ない。箱の作りも完璧で、それでいて手作り感があります。人間が愛情を込めて作っていることが伝わってきます!お客様もみんな、このパッケージを気に入ってくれていますし、作品を梱包して箱に入れる度に自分のブランドに自信が持てます。」
サイズ | 130 x 130 x 105mm |
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紙 | ボード紙グレー600g(ホッチキス箱) |
「今回、ホッチキス箱の紙と同じ素材でコースターを揃えました。自然を感じさせるグレーの色味で、それとは真逆の印象の蛍光イエローのインクをあえて合わせています。発送する際に、サンキューカードとして使用しています。」
サイズ | 直径90mm |
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紙 | ボード紙グレー600g |
印刷 | 活版印刷 |